「周りに迷惑なお客様は、念書などを書かせて出禁にする事は出来るのでしょうか」。家電量販店の店長が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーにそんな相談を寄せた。
相談によれば、この店長は、大声で喚き散らす年配の男性に悩まされている。店員が全員接客中でも「お前は誰に給料を貰ってるんだ、早くしろ」と大声で怒鳴りつけ、休みで不在の社員を「今すぐ呼んでこい」と「呼べ、電話させろ」の一点張りなのだという。
「他のお客様のご迷惑になりますので、お静かにお話し頂けますか」とお願いしても効果なし。店舗はこの男性への対応に過去20回以上悩まされており、店舗スタッフもかなり疲弊している。このような「周りに迷惑なお客様」を出禁にすることはできるのか。近藤暁弁護士に聞いた。
●念書を取り交わさずに「出禁」も可能
「クレームは多様化しており、正当なクレームと不当なクレームを明確に区別することは難しくなっていますが、不当なクレームであると判断される場合には毅然とした対応が必要です」
具体的には、どのような対応が望ましいだろうか。今回、相談を寄せた家電量販店店長は念書を書かせることを検討している。
「念書などを書かせた上で出入り禁止とすることもできます。念書は、その内容にもよりますが、基本的には不作為(店舗に立ち入らないこと、スタッフに接触しないことなど)を内容とする契約として捉えることができます。
念書を書いたにもかかわらず相手方が来店したような場合、経営者はこの念書にもとづいて対応することになります」
念書を交わさない限りは、出禁にするのも難しいのだろうか。
「経営者は念書などを取り交わさずに、出入り禁止などの措置をとることができます。経営者には『営業の自由』や『契約の自由』があります。商品・サービスを提供する相手方を自由に選択することができ、クレーマーとの関係でも商品・サービスの提供を拒否することができるのです。
また、経営者は店舗の管理権にもとづいてクレーマーを出入り禁止とすることもできます」
●「安全配慮義務違反の問題も生じる」
クレーマーを出禁だけでなく、罪に問うことはできないのか。
「クレーマーの行為は、犯罪となりうるもので、相手方が一線を越えた場合には、警察に通報することも検討すべきです。
例えば、相手方の行為により業務に支障が生じれば、威力業務妨害罪(刑法234条)、出入り禁止としたにもかかわらず相手方がこれに従わなければ、建造物侵入罪や不退去罪(刑法130条)となります。
また、従業員に暴力をふるえば傷害罪(刑法204条)や暴行罪(刑法208条)、従業員に危害を加えるようなことを告げれば脅迫罪(刑法222条)、土下座などを強いるようであれば強要罪(223条)、金品などを要求するようであれば恐喝罪(刑法249条)も問題となります。
さらに、経営者が不当なクレーマーを漫然と放置していたことにより従業員に損害(怪我や鬱病など)が生じた場合、従業員に対する安全配慮義務違反の問題も生じます。経営者は、この観点からも、出入り禁止などの適切な措置を取るべき場合があることに注意をすべきでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
近藤 暁(こんどう・あき)弁護士
2007年弁護士登録(東京弁護士会、インターネット法律研究部)。IT・インターネット、スポーツやエンターテインメントに関する法務を取り扱うほか、近時はスタートアップやベンチャー企業の顧問業務にも力を入れている。
事務所名:近藤暁法律事務所
https://www.bengo4.com/other/n_8162/
相談によれば、この店長は、大声で喚き散らす年配の男性に悩まされている。店員が全員接客中でも「お前は誰に給料を貰ってるんだ、早くしろ」と大声で怒鳴りつけ、休みで不在の社員を「今すぐ呼んでこい」と「呼べ、電話させろ」の一点張りなのだという。
「他のお客様のご迷惑になりますので、お静かにお話し頂けますか」とお願いしても効果なし。店舗はこの男性への対応に過去20回以上悩まされており、店舗スタッフもかなり疲弊している。このような「周りに迷惑なお客様」を出禁にすることはできるのか。近藤暁弁護士に聞いた。
●念書を取り交わさずに「出禁」も可能
「クレームは多様化しており、正当なクレームと不当なクレームを明確に区別することは難しくなっていますが、不当なクレームであると判断される場合には毅然とした対応が必要です」
具体的には、どのような対応が望ましいだろうか。今回、相談を寄せた家電量販店店長は念書を書かせることを検討している。
「念書などを書かせた上で出入り禁止とすることもできます。念書は、その内容にもよりますが、基本的には不作為(店舗に立ち入らないこと、スタッフに接触しないことなど)を内容とする契約として捉えることができます。
念書を書いたにもかかわらず相手方が来店したような場合、経営者はこの念書にもとづいて対応することになります」
念書を交わさない限りは、出禁にするのも難しいのだろうか。
「経営者は念書などを取り交わさずに、出入り禁止などの措置をとることができます。経営者には『営業の自由』や『契約の自由』があります。商品・サービスを提供する相手方を自由に選択することができ、クレーマーとの関係でも商品・サービスの提供を拒否することができるのです。
また、経営者は店舗の管理権にもとづいてクレーマーを出入り禁止とすることもできます」
●「安全配慮義務違反の問題も生じる」
クレーマーを出禁だけでなく、罪に問うことはできないのか。
「クレーマーの行為は、犯罪となりうるもので、相手方が一線を越えた場合には、警察に通報することも検討すべきです。
例えば、相手方の行為により業務に支障が生じれば、威力業務妨害罪(刑法234条)、出入り禁止としたにもかかわらず相手方がこれに従わなければ、建造物侵入罪や不退去罪(刑法130条)となります。
また、従業員に暴力をふるえば傷害罪(刑法204条)や暴行罪(刑法208条)、従業員に危害を加えるようなことを告げれば脅迫罪(刑法222条)、土下座などを強いるようであれば強要罪(223条)、金品などを要求するようであれば恐喝罪(刑法249条)も問題となります。
さらに、経営者が不当なクレーマーを漫然と放置していたことにより従業員に損害(怪我や鬱病など)が生じた場合、従業員に対する安全配慮義務違反の問題も生じます。経営者は、この観点からも、出入り禁止などの適切な措置を取るべき場合があることに注意をすべきでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
近藤 暁(こんどう・あき)弁護士
2007年弁護士登録(東京弁護士会、インターネット法律研究部)。IT・インターネット、スポーツやエンターテインメントに関する法務を取り扱うほか、近時はスタートアップやベンチャー企業の顧問業務にも力を入れている。
事務所名:近藤暁法律事務所
https://www.bengo4.com/other/n_8162/