朝方の肌寒さも薄れていく初夏の日頃、私はふとそう思ったのだった
なにか理由があるのかと問われると私は別に無いと答えると思う
降って湧いた感情というような対極的なものが手を組んでしまった摩訶不思議な状態なのでは……
なんて、鏡に見える自分を客観的にとらえてみる
黒澤ダイヤ
彼女はとても優秀な人だと思っている
地元の有名な一族の長女としての誇りを持ち、名前に劣らない強かさがあるように思う
それに対して平々凡々である私が羨み妬み僻み…まぁなんとも矮小なものを抱いている
というわけでもない
今朝起きるまで、私は彼女に死ねと思うような覚えがない
良かった
続編ということで期待してなかったけど、見事に裏切られました。
ダイヤってブッブー言い過ぎ!
豚かお前は!
ダイヤブーブークッション!
本当に唐突に芽生えたその感情は、自分でもいかんともしがたい
なにせその原因が分からないのだから
じゃぁ殺してしまえば良いのでは? という至極簡決……簡単な解決方法もあるわけではあるけれど
それは別に直線的というだけで簡単じゃない
生徒会室にいるときに包丁を持って押しかければいいだけかもしれないけど
方法を考えてしまうと止まらないもので
いつ、どこで、どうやって
そんなことをパズル的に組み合わせてしまう自分がいることに驚きはなかった
手持ち無沙汰な殺意が転がり回っているのは、それなりに愉快だった
自室を出て顔を洗い、母親の「おはよう」というちょっぴり眠たげな声に明るく返事をする
父親が出たことを示すように玄関の施錠は不用心にもされていない
もし彼女が似たような一般的家庭であるなら、この隙に侵入して刺し殺すのも一興ではないか。なんて思う
彼女には妹がいる
ピギィだかルビィだか良く覚えてない2つほど歳の離れた妹が
彼女を釣るのは難しいけれど、妹を釣ることで釣れるような気はする
殺す対象が2人になるのは処分が面倒ということもあって、否決された
登校の準備を終えて、自室のベッドで一息
プリーツがよれるのも厭わずに寝転がる
包丁を持ち出すか、鋏を使うか、久しく使っていない彫刻刀を使うか
思えば人を殺す道具に満たされているんだなぁ……なんて他人事のように考えて、鋏と彫刻刀を鞄に入れる
ついでにガムテープと余分なハンカチを持っていく
これで準備は出来てしまった……だろうか
ろくに調べもせずに、理由もなく、ただ何となく殺したくなった
こんな私は全国の犯罪者様からは殺しを甘くみてる小娘かもしれない
とはいえ私は確かに小娘
黒澤ダイヤを殺そうと、所詮は少女Aである
お名前ちょうだいされた皆々様とは違うのは当然だと言えるかもしれない
浦の星女学院
私達の通う学校
黒澤ダイヤが生徒会長を勤めるこれと言って特筆すべき……
つい最近はスクールアイドルが言えるかもしれないが
私としては別にどうでもいいことだ
同じ制服、ちょっと違う同じ制服
複数人に紛れて校舎の中へと入っていく
とても緩やかで簡単な人殺しの侵入
同校の生徒というのはそれだけ特権なのである
3年のクラスに向かう途中
どこからともなく耳障りに甲高い声が聞こえたが無視する
理事長であるその声の主の方が殺したいのに実際に殺すほどの殺意が湧かないのだから不思議なものである
まばらにクラスメイトが居るなかで、教室に荷物を置いて彼女の机を見る
下駄箱に靴はあったが鞄がない
とすれば生徒会室に直行したのだろうかそれともスクールアイドルの部室か
少し迷って生徒会室に向かうと扉には鍵がかかっていた
用心しているのではと半ばあり得ない警戒心を考慮してノックしてから声をかけたが反応はなかった
体の外にまで出てきそうな殺意を諌めるようにため息をつく
スクールアイドル部なんて潰れたままで良かったのだ
そうすれば彼女は朝一番にここに来ていておかしくなかったのに
より殺したい気持ちが高まるのを感じながら、
教室へと戻る
彼女の姿を確認できたのは、朝礼が始まる数分前だった
昼休み、級友の下らない小話に耳を傾けていると
彼女が放課後に生徒会室に行くという話が聞こえてきた
スクールアイドルとしての練習はどうするかという話があったからだ
普段は耳障りな理事長の声も
このときばかりは許すことが出来た
決行は放課後に
そう思うと心が高鳴った
なぜだか分からない殺意は、存外に心地良い
放課後になると、先に行ってるからと理事長ともう一人の部員が教室を出ていく
それを見送ってから一拍ほど遅れて退室の準備を終えた彼女は
どこか疲れ気味に肩を落としたが、クラスメイトの「またね」には笑顔で答える
鞄を肩に引っかけた彼女が顔をあげたかと思えば「どうかしました?」と、彼女の言葉が私の頬を叩いた
不意をつかれて返事を忘れた私を彼女は見つめる
彼女らしい強みの感じられる瞳
見返して……おもむろに顔を背けた
別に何も。そう返すと彼女は「そうですか……」と意味ありげに切って
私にも「また明日」と声をかけてから退室していく
その明日は彼女には来ない
それは私が奪うものだ
彼女が教室を出てから一分ほど待ってから私も教室を出る
ゆっくり歩いて、校庭から聞こえる運動部の騒々しさに微笑む
みんなが日常に生きるなかで、唐突に一人の命が奪われる
慕われて愛されて期待されていた生徒会長が殺される
それはどれだけの影響があるのだろうかと空想する
想像妊娠した殺意はもはや私の心そのものなのかもしれない
一歩一歩、彼女のいるであろう生徒会室に近づく度に心が震えた
本来数分もかからない道のりを十数分もかけて
ついにたどり着いた生徒会室の扉に耳をつける
話し声はしない
朝のように叩くと、彼女の声が返る
彼女だけの声が。
「黒澤さん」
入室しての第一声、彼女は私とすぐに気づいて「どうかしたの?」と顔をあげてくれた
生徒会室には彼女一人だった
鞄を肩にかけたまま彼女に距離を詰める
なにか用件があるのかと訝しげな彼女は
私が何も言わないでいると、手元の申請書に視線を落とした
まだ日が高く感じられる日差しが室内を明るくする
彼女の艶のある黒髪はどこか非日常にさえ思える綺麗さを纏う
互いに何も言わないままでいると彼女は「用件は?」ともう一度口にした
何かあった方がいいのか
女々しくも感じられる意味不明な「なにか無いといけない?」という言葉が私からこぼれ落ちると
彼女は困ったように顔をしかめる
それはそうだろう
彼女は一応、生徒会長としての仕事中で
しかも大して仲も良くないただのクラスメイトにそんなことを言われたら誰だって困惑する
ならばと「黒澤さんを殺したくて」私はそう言った
|c||^.- ^|| 私はどうなってしまうのでしょう
彼女は手を止めると、私を見上げた
じっと見つめてくる顔は教室とは違って恐れが入り交じっている
彼女の引き締まっていた口許が緩んで少しばかりだらしなく半開きになると
すぐにきゅっと結ばれて「それは……どういう……」なんて半恐半疑な声が流れてきた
普段から自分が死ぬと考えている健常者は殆どいないと思う
その僅かに考えている人の中でも<殺される>なんて考えている人はもっと少ないだろう
ましてや、羨まれる立場でこそあれど
恨まれるような失態をおかした覚えの無い彼女にとっては信じられなくても無理はなかった
「そのままの意味だけど」
私は当たり前のようにそう答える
彼女は困惑を隠せないままに、笑みを浮かべた
なんの冗談か、誰の差し金か
彼女の逡巡が見て取れる瞳の揺れを見守るほど私の忍耐力はなかった
「殺したくなっちゃったんだ。ごめん」
まずは一回、彼女の顔面を殴打した
麗しい生徒会長黒澤ダイヤ
彼女らしくもない奇妙な声を漏らしながら、
仰け反って音を立てて椅子ごと倒れる
痛みに呻き殴打された左頬を手で押さえる彼女を見下ろし、鞄からハンカチとガムテープを取り出す
その一瞬に振り返った彼女の脇腹を蹴りあげる
嘔吐に似た濁った声が彼女の口から漏れて
足に残る彼女の柔らかい肉の感触
それは特別心地好くも痛くもなくて、這いずって動く彼女の惨めさの方が心に触れるような感じがした
丹精込めたのかは知らないけれど
長く美しく保たれた彼女の長い髪を右手で引きちぎる勢いで掴みあげる
そうして、痛いと訴える彼女の口にハンカチを詰め込む
半狂乱になりかけの彼女の暴れる手足が煩わしくて、顔をもう一度殴る
くぐもった悲鳴をあげて、すぐそばの壁に頭を打ち付けた彼女は顔を庇って体を丸める
口の中の布を引き出そうと動いた手を掴んで引き剥がし、付け根を膝で押し潰す
ハンカチがはみ出ている口許だけが異質ではあるけれど
痛みと恐怖に染まる彼女の表情はいつもと変わらずに綺麗だと、私は思った
もうやめてと訴えているように感じる彼女の視線に首を振る
私には、私を止める術がない
私の中にある彼女の死を望む心は張り裂けた
帰る場所のない殺意なんてどうにもなら無い
ガムテープを彼女の口に貼ると、押さえていない彼女の左手がそれを弾く
壁際で逃げ場の無い彼女の抵抗はとても弱いけれど
貼りはじめのガムテープは容易に剥がれてしまう
彼女の左手を掴んで耳の横に押さえつけて
その部分を始点にしてガムテープを巻き付ける
もぞもぞと動く両手を足と片手で押さえ込み、暴れる足を体で押さえて何度も何度も彼女の手首と顔にガムテープを巻き付けて、
最後に口許に貼り付ける
髪を巻き込んでいるせいかそれはとても不恰好で
少しばかり今日が覚める感じがした
足で押さえていた右手を後ろ手に無理矢理押さえつけて、ガムテープを巻く
彼女の抵抗はなぜだかとても弱くなっていて
そのあとの足に巻くのもすんなりといった
彼女の格好は南アジアのどこかの踊りにありそうな惨めにも思えるほどに窮屈な様で
壁に立て掛けるように体を起こしてあげると、どうしたものかと悩ましくなった
私は別に芸術家ではないし、彼女の死に様に意味を持たせるつもりなんて無い
にも拘らず今は裏の意図があるように思えてくる無様さというのは、無計画のなせる技なのかもしれない
とはいえこれは少し違うと考えて彼女の睨む視線と向き合う
鋏を取り出すと私の<殺したくて>がより現実味を帯びるのか、彼女の瞳には恐怖が揺らぐ
その潤んだ瞳を可愛らしいと思えるのは、私が猟奇的な殺人鬼ではないからだと思う
鋏を近づけてあげると、彼女は瞼を閉ざして眉間に皺を寄せる
酷く縛られている体はそれでも隠しきれずに震えが見える
生徒会長として、生徒の模範足り得ると思えていた彼女のそんな弱々しさには特に失望もなにもない
左手の近く、髪に接していない部分に刃先を差し込んで切る
二回、三回切る度にびくつく彼女の目元からは涙が伝う
私のそれが脅しではなく、左手の拘束を解く為だと察したのか
ゆっくりと開いた瞼から瞳が窺い始める
答えてあげるべきか……そう思って微笑む
「今なら殴り返せるけど」
思っていたのとは違う言葉が口から飛び出す
彼女は目を見開いたかと思えば、首を横に振る仕草を見せる
仮に私を殴り飛ばせても逃げきれるなどとは思わないらしい
確かにそうなのだけど、殺すと言っている相手を前に無抵抗になるのはどうなのかなとちょっぴり残念に思ってしまう
頭にガムテープを残したまま左手も右と同じように背中側で止めると、少しは殺される側としての尊厳が守られる格好になっただろうかと一息つく
頭のガムテープは一思いに勢いで取り払ってあげた
壁際で体育座りをしている彼女の顔色はとても悪くなっていた
この後殺されることを思えば仕方がないのかな……なんて心だけでも寄り添う
私は常日頃から人を殺したいだなんて思っていないし
どんな方法があるかなんて調べた事もなかった
調べてさえいれば、簡単、楽、優しい
そんな彼女にとって幸せな最期を迎えさせてあげられたかもしれない
かといって今から調べる気にもなれないのは、私の心に深刻な欠損があるからなのかな
さておいて、鋏とは別に彫刻刀セットを鞄から取り出して彼女の前におく
足元に置いただけで足を引っ込めたのはなんだか可愛らしかった
「どっちが良いんだろうね」
鋏か彫刻刀か
どちらも鋭利なものに変わりはないけれど
参考までに聞いてみると彼女は首を振って唸った
それはもう、必死という言葉が似合うほどに
でも「ごめんね、殺したいんだ」と私は残念に思いつつ答えた
彼女は泣いている姿も美しく思えた
たとえ縛られているとしても。
悲劇のヒロインという言葉を思い出す
それはつまるところの彼女なのではないかと
泣きわめくのではなく、嗚咽のように柔らかなはずの彼女の声は塞がれているせいかモザイクがかかっているように濁る
なぜ、どうして
そんな疑問を口にしているのかもしれないと思うと、
私まで泣いてしまいそうになる
「殺したいんだ。ごめんね……殺したいんだ」
だから、私はもう一度正直に答えた
彼女を恨んでいないし憎んでいない
でもどこからともなく忽然と生まれた殺意は、私にだってどうにもなら無い
彼女の涙を拭ってあげる
左も右も指先で優しく、傷つけないように
赤く腫れた頬がちょっとだけ痛々しく見える
彫刻刀と鋏か
刃渡り…殺したいというのが正しいか分からないけれど
大きい方が早く楽になれるかもしれないと、鋏で殺すことに決めた
やっぱり心臓をひと突きが一番かなと考えて鋏の先端を彼女の胸元にあてる
彼女は止めてと体を捩って拒絶する
長引けば彼女は助かるだろうか
スクールアイドル部の部員が遅いことを不思議に思って駆け付けるかもしれない
だったら……あまり時間は残されていないかな
体を動かせるだけ動かして逃れようとする彼女は横向きに倒れてもまだ動く
やっぱり、生きることを諦めてないんだね。と、彼女を押さえつけながら思った
踏みつける膝に感じる抵抗力
それをよしとしない力で踏みつけてももがこうとする
「大人しくしてくれないと、無駄に体が傷付くよ」
そう言うと、彼女はまた首を振る
嫌、嫌……と。
でもそれは聞いてあげられない
だから、無知な私が知恵を最大限に振り絞った殺しかたを選ぶ
左胸の付け根から下に数センチ……軽く触って骨の無いところ。
服があるせいでうまく分からないけど
乳房に向かって左側、乳頭の左下の部分を撫でる
正確な位置を狙わないと余計に傷付けちゃうのは言った通り
これはやっぱりダメかな……と
彼女には申し訳なく思いながらも、仰向けに転ばせる
下腹部の辺りを中心点として裾の辺りに鋏を入れると、彼女はまた暴れようとして切っ先が滑って無関係な場所を断ち切る
斜めの切れ込みは脇腹に向かっていて
下手をしたら彼女の肌が切れていたかもしれない
そう思うと、我慢できなくて彼女の右頬をひっぱたいてしまって
弾けるような音が響き、床に頭を打った鈍い音がひっそりと続く
「次も暴れたら失血死させることになるよ?」
痛くて苦しくて怖いのが長引くことになる
そう言うと彼女は嗚咽をこぼしながら動かなくなった
たぶんきっとそう思う……なんて不確かなのは口にしなかった
私は彼女を殺したいだけで、傷付けたい訳じゃない
だから大人しくなってくれた彼女には「ありがとう、痛くしてごめんね」と囁く
今度こそ、彼女の制服を縦に切り開く
布切り鋏じゃない分少し手こずったけれど、おおむね綺麗に開くことが出来た
露になった肌着も同じように切断して、ブラジャーは……フロントホックに感謝して切らずに外す
彼女の体は運動部とも言える部活に所属しているお陰か、
乳房には緩やかな膨らみがあるものの、すっきりと引き締まっていて
余計な傷をつけなくて良かったと、思わず安堵した
彼女はとても悲しそうな顔をしていた
口を塞いでいるから悲鳴もなにもないけれど、
殺さないで……そう訴えているのがひしひしと感じられた
でも、私は彼女に首を振る
それはできない、生かしてあげることは出来ない
いまここで死んで貰わないといけないんだって、告げた
伝い落ちる涙は拭っても拭っても彼女の目元から溢れていて
どうにも出来ないと拭うのは諦めて彼女の胸の中心部を擦る
びくんっと震えはしたものの、彼女はもう抵抗しなかった
再三殺したいと言った私が止めてくれるとはもう思っていないだろうし
暴れたところで痛くて苦しさが増すだけだとようやく理解してくれたんだと思う
「ここだよ。ここを今から刺すね」
さっき撫でた場所よりも少し内側の辺り
名称は覚えてないけど、横並びの骨のちょうど隙間になっている部分を指で押す
念のため彼女の体が動かないように馬乗りになってから
鋏を開いて、僅かに膨らんでいる方が上になるようにして指で押してあげたところに突き立てる
あまり尖っていないのが少し可哀想だけど、彫刻刀で傷をつけてからというのはもっと可哀想だからと……そのまま刺すことにした
刺すというよりは押し込むような感覚で力を入れる
皮膚の押し返してくる抵抗力は思いの外強くて上手く刺さらず
彼女の悲痛であろう呻き声が耳に残る
「ごめんね」
一旦彼女の体から鋏を離す
ほんの僅かに刺さっていたらしく、雀の涙と言うに相応しい微量の血が滲んでいた
手で押すのではなく、私自身の体で押し込もう
意を決してもう一度突き立てると
彼女は嫌だと首を振った
お願いと瞳を潤ませた
それでも私は彼女の体から鋏をそらすことはしなかった
抱き締めるかのように、彼女と体を重ねた
手に感じる抵抗力が少しずつ薄れて沈んでいくのを感じながら
私は彼女の見開かれていく瞳と見つめあった
暴れることもままならずに呻く声に聞き込んだ
校内の放送で聞いていた
教室の中で聞いていた
テレビやパソコンで聞いていた彼女のもう聞くことが出来なくなるだろう生の声を感じて
そうして、ふと……体が沈んだ
離れると、彼女の胸に鋏が残っているのが見えた
きっと心臓に刺さってくれたと思う
でも、彼女はまだ死んでいない
「もう少しだよ」
突き刺さった鋏を引き抜く
体を震わせた彼女は、それでもすぐには死ななかった
胸から血を流して、涙を流して
さっきまではまだ力強かったと思えるほどに弱くなってしまった呻き声を漏らす
だんだんと生気の薄れていく瞳
瞼がゆっくりと閉じ始めて……それっきり動かなくなった
「黒澤さん……?」
瞼は半開きで、なのに胸から流れる血はまだ止まっていなくて
でももう生きてはいないんだと彼女の瞳が語る
口許のガムテープを剥がすとハンカチでは吸いきれなかった唾液が糸を引く
そのまま彼女の唾液が染み込んだハンカチを回収する
べったりと濡れそぼったハンカチは彼女が生きていた証
ハンカチを引き抜いたせいで溢れた残りが口許を汚ならしくさせる
「……なんだろうね」
死んでほしいと私は思った
殺さなければいけないと思った
それなのに、私は特に満たされることもないまま彼女の遺体を見ていて
この後どうするかなんて考えていなくて
とりあえずと椅子を直した
もう動かない彼女の体は力なく重くて、椅子に座らせても項垂れてしまう
死後硬直なんてものもあるんだっけ……と思い出して
彼女の遺体を床に下ろす
物言わぬ亡骸となってしまった彼女の体が不自然に浮くのを正すために
もう必要のない両手足のガムテープも剥がす
ちょっとだけ赤い拘束の痕は少し痛々しさが感じられた
「またね」
そう声をかける
彼女はなにも言わなかった、生徒会室にはなにも響かなかった
部屋を出る
運が良いのか悪いのか、私は誰にも会わずに昇降口から出ていく
彼女に染められた鋏とハンカチを鞄に忍ばせて。
なぜ彼女が殺されたのか
怨恨の線はないのではという憶測が囁かれているのを耳にして
私は確かにそれはないかな。と、クラスメイトに同意した
彼女は慕われていた
少し厳しい面があったのは事実だけど、それで恨まれたなんてことはないと思ったから。
そもそも、私が殺したのは死んで欲しかったからというだけで、憎しみはこれっぽっちもなかった
自殺ではなく殺人があったということもあって
基本的に外出をしないようにと指示を受けての休校になったが
それでも生徒の精神状態を考えて行われるカウンセリングを受けても私はどうともならなかった
罪悪感もなにもなく……普通だった
悲しさは唐突に訪れるかもしれない
私に対してそう言ったカウンセラーに「そうでしょうか」と返した
私は彼女の死を悲しむことはできない
嘆くことも出来ない
「私はそれが出来る人ではありません」
その私の言葉に戸惑うカウンセラーの顔は彼女のそれには酷く劣って見えた
それから数日も立たずに、私のもとには警察が訪れた
悲しさよりも早い警察の来訪に私は「やっぱりね」と笑った
彼女の遺体から検出された私の指紋などから判明したと言う
否定はせずに「死んで欲しかったので殺しました」と白状した
嘘をつく理由はなかったし、警察が来たら認めようと思っていたからだ
なぜ素直に認められるなら自首をしなかったのかと問う警察に
私は「どうしてでしょうか」と問い返して首を振った
彼女を殺したのは私、認めるべきなのも私
なのに、私は自ら<殺した>と言うのは違う気がした
理由は分からない。でも、それは違うと思ったから自首しなかった
取り調べを行う女性の私を恐れるような顔は、やっぱり彼女と比べると劣って見えた
動機は死んで欲しかったから。
なのに恨みも妬みも憎しみも私にはなくて……無差別なのかと言う問いには失笑さえした
「私はただ、朝起きて彼女に死んでほしいと思っただけです」
素直な私の答えは、どうしてか異常者としての扱いを受けるきっかけとなってしまった
黒澤ダイヤを殺害したとして逮捕された<少女A>は精神に重大な欠陥があるとして、精神病院に入れられることとなった
その情報が表に流れてから、表向きには転校扱いで学校から消えた私はそのまま精神病院に入院することになった
人を殺しても私は所詮<少女A>だった
演じたわけでも望んだわけでもなく精神病で
責任能力が欠如していると判断されたことが大きいのかもしれない
「私はおかしいのかな……」
そう呟いてみても、答えは返らない
ふと、私は彼女にそれを聞くべきだったんじゃないかと思った
<恨みも憎しみもない貴女を殺したいと思うのは異常だと思う?>
彼女はなんと答えただろう
冗談ととらえて流しただろうか
恐れ戦いて異常者と叫んだだろうか
寄り添って……考えてくれただろうか
更正なんて私には不可能だと私が知っている
それを何度繰り返しても、周りは「大丈夫」と微笑みかける
貴女はまだ子供だからやり直すことが出来る
善悪を正しく認識し、罪を償うために心を入れ換えて頑張って生きていくべき
そんな理解できない何かを周りは羅列し続ける
私は私が正しいとは思っていないし、善悪の判別はつく
だから異常なのは私ではなく、周りではないかと思う
「……死ねば良いのに」
そう呟いて、私は空虚な気分にため息を溢す。
私はどうして彼女に死んで欲しくなったのか分からない
カウンセラーは心の内で彼女に対する何らかの感情を抱いていて、
それが表に出てきたのかもしれないと言っていたけれど
どうにも理解できなかった
分かるのは、
彼女を殺しても満たされなかったということ
彼女の消えた私は自首もしないほどに無気力だったこと
彼女の体に残る私の爪痕が私へと繋がっていたことを理解したときに、笑うことが出来たということくらいだ
彼女はもういない
遺体は骨となって墓の下に眠っているのだろうか
それを考えると、私は<どうか安らかに>と思わざるを得なかった
「……また明日」
あの日、彼女が教室で私にかけてくれた言葉
私は対して「またね」と、殺してから返した
果たされることのない約束
でもそれで良いんじゃないかと私は思う
きっと、私達は二度と出会うべきじゃない。
会えば私はまた彼女を殺してしまうから
「死ねば良いのに」
心の奥、空虚な部分が宇宙のどこかにあるブラックホールのように
身も心も吸収して消え去ってしまえば良いのにと、思った
−−翌朝<少女A>はベッドの上で亡くなっているのが確認された
は?
アンチスレかと思ったらSSだったけど意味分からん
モブ少女がなんでダイヤ殺してんだよ
つーかスレタイに【SS】は常識だろ半年ROMってろ
|c||^.- ^||??こんな終わり方認められるとでも?
個人的には良かった
日常からの非日常、この後のアクアメンバー、ルビィちゃんの事等々妄想が捗る
この手のやつ、見たくないなと思いつつ引き込まれて結局読んでしまう
良い良い
臨場感もあってググッと引き込まれる文章力
作品としての完成度が非常に高い
アンチしねって言おうとしたらSSで混乱したけどやっぱり>>1ってダイヤさんのアンチだよねこの内容 推しキャラがモブに理不尽に殺されるのが好きな奴もいるんだぞ
-------,,,ノノ
/;,丿'''"""´´´`彡
/ ,ミ::::: 闇 iミ
|ミミシ:::::: / ,,,〜,,\!
_,-'' )シ::: ,,(/*;)、 /★)| ,,・ ∴.'
∧sw∧ , -' (.__,-''し::::: ) ))' ´i |`⌒i
( #゚Д゚) .,-'~ ,- ' ミミ:::::ヽ f o o)、i
/⌒ )ヽ(w i .,-'~ ,-'~ , ),・ヽ::::::::| ))-=三=-∵・∵
.,/ / ヽヽヽ ,-/'~ ,ノ ,、', __/ヽヽ:::: ゛゛ノ ;’``゙.ー--,, ・,
/ ^)' l ゝ _)-'~ ,-'~ / ヽ`ー-‐'  ̄ ̄ヽ
/ /' ヽ ^ ̄ ,-'~ / / ) ノ  ̄ \
(vvvつ ヽ / (⌒`──'\ / ///酒井ノ /\
| / ゙────/71/ / /かずお|\/\ 'ヽ
l、_ / / // // \ \
俺達やGODが作り上げたラブライブ!サンシャイン!!をゴミ糞バカアニメに改悪するな!!
CYaRon!の名付け親のにこっぱなのおっさんも草葉の陰で泣いているぞ!
Aqoursのキャラをテメーのくだらん自己満足のために改悪した挙げ句おもちゃにしやがって・・・
お前のやっていることはどう考えても原作レイプだということをいい加減に理解しろッッ!!
サンシャイン!!の劇場版が終わったらとっととこの業界から失せろ!!
この中村負広と並ぶセンスダサすぎ(笑)、器小さすぎ(笑)の自己満足オナニード低脳無能暗黒監督がっ!!