戸叶和男『日本奇習紀行』
古くから続く神事の類のなかには、現代の我々が持つ感覚からすると、どこか怪しげな要素を持つものも少なからず存在している。かつて北日本のとある沿岸部の地域で行われていたという少年少女たちによる滝行の儀式は、まさにそんな「怪しい儀式」の1つだ。
「今はもうやらなくなってしまったけれども、昔は毎年正月になるとね、ここから少し奥の方へ行ったところにある滝にね、子供たちが打たれに行く風習があったんだよ」
かつて当地に存在していたという少年少女たちの滝行についてそう語りはじめたのは、現代も当地で暮らす横脇昭吉さん(仮名・90)。横脇さんの話によれば、その昔、当地の子供たちは真冬の寒い季節であるにもかかわらず、半裸で滝に打たれるという、虐待以外の何物でもない行事に、強制参加させられていたのだという。
「一応は、村人全員の健康と長寿、豊漁豊作を祈願してのものだからね、絶対に参加しなくちゃいけなかったの。けれどもね、男も女も、腰巻1つしか身につけちゃいけなかったものだから、それはもう寒いやら恥ずかしいやらでね」
それが神事であるとはいえ、正月の寒い時期に、今にも氷つきそうな冷たい水に打たれるというだけでも、当の子供たちにとっては災難でしかないが、それに加え、第二次性徴が始まっているような年頃の子供たちでさえも、薄い腰巻1枚という恥ずかしい姿で滝に打たれるというのだから、開いた口が塞がらない。事実、そうした思春期の子供たちの多くが「ポロリ」を連発していたのだという。
「それほど大きな滝ではないけれどもね、やっぱり上から水がザーッと流れてくると、腰巻なんかスルリと落ちちゃうの。だから浴び終わる頃にはみんなすっぽんぽん。小さいうちはいいけども、色気づく頃になると、恥ずかしくて恥ずかしくて。本当にいやだったよ」
同じ年頃の異性の裸を見ることができる一方で、自分もまた、みんなに裸を見られてしまうというこの儀式。しかもそうした彼らの姿を、大人たちは手を打って大喜びしながら、鑑賞していたのだというから呆れるばかりだ。昨今では、不況が長引いているとあって、この習慣の「復活」を求める信心深い老人たちもいるとはいうが、現代の世情を鑑みれば、さすがにその確率は、限りなくゼロに近いものであるといえそうだ。
以下ソース
https://tocana.jp/2019/10/post_118118_entry.html
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かつて当地に存在していたという少年少女たちの滝行についてそう語りはじめたのは、現代も当地で暮らす横脇昭吉さん(仮名・90)。横脇さんの話によれば、その昔、当地の子供たちは真冬の寒い季節であるにもかかわらず、半裸で滝に打たれるという、虐待以外の何物でもない行事に、強制参加させられていたのだという。
「一応は、村人全員の健康と長寿、豊漁豊作を祈願してのものだからね、絶対に参加しなくちゃいけなかったの。けれどもね、男も女も、腰巻1つしか身につけちゃいけなかったものだから、それはもう寒いやら恥ずかしいやらでね」
それが神事であるとはいえ、正月の寒い時期に、今にも氷つきそうな冷たい水に打たれるというだけでも、当の子供たちにとっては災難でしかないが、それに加え、第二次性徴が始まっているような年頃の子供たちでさえも、薄い腰巻1枚という恥ずかしい姿で滝に打たれるというのだから、開いた口が塞がらない。事実、そうした思春期の子供たちの多くが「ポロリ」を連発していたのだという。
「それほど大きな滝ではないけれどもね、やっぱり上から水がザーッと流れてくると、腰巻なんかスルリと落ちちゃうの。だから浴び終わる頃にはみんなすっぽんぽん。小さいうちはいいけども、色気づく頃になると、恥ずかしくて恥ずかしくて。本当にいやだったよ」
同じ年頃の異性の裸を見ることができる一方で、自分もまた、みんなに裸を見られてしまうというこの儀式。しかもそうした彼らの姿を、大人たちは手を打って大喜びしながら、鑑賞していたのだというから呆れるばかりだ。昨今では、不況が長引いているとあって、この習慣の「復活」を求める信心深い老人たちもいるとはいうが、現代の世情を鑑みれば、さすがにその確率は、限りなくゼロに近いものであるといえそうだ。
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