
安倍晋三首相が2019年10月から消費税率を8%から10%へとに引き上げ、その増収分を教育無償化などに充てる「使途変更」を検討していることが明らかになった。
10月下旬とみられる衆院選の争点にする公算も大きくなっており、この方針が決定された場合、日本経済や財政、社会構造にどのような変化が起きるのか、専門家に連続するインタビューする。
第1回は、政府の財政制度審議会で会長代理を務める池尾和人・慶應義塾大経済学部教授に聞いた。
──消費増税分のうち、教育無償化などの社会保障費の配分を拡充する案が浮上している。
「財政バランスの回復のめどが遅れることになる。低金利よって足元では財政規律をそれほど気にしくてもよい状況が続いているが、問題は何年先まで今の状況が続くかということだ」
「国内的に人口動態という大きな問題が控えている。2025年に団塊世代が後期高齢者になると貯蓄の取り崩しが始まり、同時に現在と同じ社会保障レベルのままでは、大幅な財政赤字が避けられない」
「一方、それを賄う国内貯蓄が不足する状況になり、海外から借り入れをせざるを得なくなる。現在のような低金利では済まなくなる。中長期的な見通しを持った財政経済運営が必要だが、そういう発想はうかがえない」
──2020年度までにプライマリー・バランス(基礎的財政収支)を黒字化させる財政健全化目標の達成が、一段と遠のくということか。
「黒字化目標は先送りせざるを得ない状況になっているが、人口動態問題のダイナミズムは止められない。財政赤字が拡大した場合、社会保障サービス、例えば介護が放棄されるといった事態が起こりかねない」
──今後の財政と金融政策のあり方は。
「さまざまな理由で物価が上昇することはあり得る。中期的にはインフレが心配であり、インフレになった時に金利を引き上げれば、国債費が増大して財政が持たなくなる。そのために利上げを遅らせればインフレが加速する。
今後、何らかの要因で物価が上がり出した時に、対応できない状況になっていることを懸念している」
https://jp.reuters.com/article/interview-consumption-tax-idJPKCN1BU1JK