
――産業医は個ではなく全体を重視するのはわかります。異動も希望通りにできないのならば、会社としてうつ傾向の社員への配慮などは欠かせないと思いますが。
吉野:配慮は重要です。ただ、よく見られるのが配慮と甘やかしの混同です。配慮は必要ですが甘やかしは不要です。復職した社員に最初か
ら100%の仕事を与えるのは無理ですので1カ月間は50%、2カ月目は70%と少しずつ増やしていく配慮はしなければいけません。ところが、
再発を恐れ50%の仕事を長期間続けさせ100%の給与を支払うというのは甘やかしです。職場全体のバランスを崩します。
私は、どんなタイプのうつでも、3カ月は配慮するが4カ月目からは100%の仕事になることを復職の条件としています。うつ症状の社員に
「頑張れ!」と言ってはいけない、と指導する話がありますが、これはあくまで病状が悪く、療養している人への話であって、復職者に対
しては状況が違います。職場は頑張ることで給料をもらうのですから、頑張れない状況で復職してはいけないのです。もちろん「頑張れ」
をどのように言うのか程度の問題はあります。復職者への配慮は必要ですが、頑張らなくても勤まる職場などないわけですから、それを無限大にしてはいけません。
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