日本人の「給料安すぎ問題」の意外すぎる悪影響
「monopsony」が日本経済の歪みの根本にある
2020/06/18 5:30
デービッド・アトキンソン : 小西美術工藝社社長
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、このままでは「@人口減少によって年金と医療は崩壊する」「A100万社単位の中小企業が破綻する」という危機意識から、新刊『日本企業の勝算』で日本企業が抱える「問題の本質」を徹底的に分析し、企業規模の拡大、特に中堅企業の育成を提言している。
今回は、労働者を雇う会社側の力が強くなりすぎ、労働者が「安く買い叩かれる」状態である「monopsony」が、日本経済をいかに歪めているかを解説してもらう。
労働力を安く買い叩くと、結局「経営者」も苦しくなる
前回の記事では「新monopsony論」を紹介しました。
monopsony(モノプソニ―)とは、労働者を雇う会社側の力が強くなりすぎ、労働者が「安く買い叩かれる」状態を指します(詳しくは「日本人の『給料安すぎ問題』はこの理論で解ける」をご覧ください)。
monopsonyの問題は、単に労働者に支払われる給料が不当に安くなるということだけではありません。
さまざま論文では、monopsonyの力が強く働くようなると、国の産業構造に歪みが生じ、生産性が低下し、財政が弱体化するなど、多くの問題が生じると論じられています。
つまり、労働力を安く買い叩くことは、巡り巡って経営者自身の首を絞めることにもつながるのです。
このような状況に陥らないための方策として、「小規模事業者の統廃合」「中堅企業の育成」「最低賃金の引き上げ」が有効であると考えられています。
monopsonyによって生じる歪みは、大きく16に分けられます。先進国の中で経済規模が第1位のアメリカと、第2位の日本、そして第3位のドイツを分析すると、日本が最も強いmonopsonyの特徴を有していることがわかります。つまり、日本は世界有数の「monopsony大国」なのです。
今回は、monopsonyによる代表的な歪みをご説明していきます。いかに日本が「monopsony大国」であるか、ご確認ください。
略
https://toyokeizai.net/articles/-/357011