東京電力福島第一原発事故を巡り、東電が巨額の損失を出したのは安全対策を怠ったためだとして、東電の株主が旧経営陣5人に損害賠償を求めた株主代表訴訟の口頭弁論が27日、東京地裁であった。津波対策の実質的責任者だった武藤栄元副社長(70)の証人尋問があり、大津波への対策を見送った判断について「合理的だった」と述べた。
武藤元副社長は業務上過失致死傷罪で強制起訴され、2019年9月の一審判決で無罪になった。公の場で証言するのは、18年10月の被告人質問以来。
武藤元副社長によると、部下から08年6月、国の地震予測「長期評価」に基づくと、従来の想定の3倍近い高さの大津波が原発を襲うとの試算結果の報告を受けた。その1カ月後、防潮堤工事などの対策を取らないまま、外部機関に試算方法の検討を依頼するよう指示した。
武藤元副社長は長期評価について、部下から「根拠がよく分からず、試算結果も信頼性はない」と説明されたとも証言。「担当者がよく分かっていなければ、何も決められない。社外に意見を求めるのは、適切でごくごく自然なやり方だ」とよどみなく話した。
次回7月6日の口頭弁論では、武藤元副社長のほか勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、清水正孝元社長、小森明生元常務の証人尋問がある。(山田雄之)
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