中国の研究者が、人工子宮内で成長する人間の胚をモニタリング、およびケアするための「ロボット乳母」を開発したと、1月31日、香港紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。
江蘇省東部にある蘇州医用生体工学研究所の研究者らが開発したのは、人工子宮内の胎芽(妊娠8週未満の胎児)を詳細に観察、記録し、二酸化炭素や栄養分、人工子宮内の環境などを自動で調整する人工知能システムだ。このシステムはまた、健康状態や発達の可能性をもとに、胎芽を「ランク付け」することもできるという。
この研究は12月、中国国内の学術誌「ジャーナル・オブ・バイオメディカル・エンジニアリング」で発表された。論文によれば、このシステムを使うことによって、胎児は女性の子宮よりも安全かつ効率的に成長することができる。このシステムはすでに、動物の胎芽を数多く育てているという。
2021年、中国の出生率は建国からの60年間で最低を記録した。この新たな技術は、この国を悩ませる人口問題の打開策となるかもしれない、と中国の研究者たちは語る。
現在の国際法では、発生から2週間以上経ったヒト胚の実験的な研究は禁止されている。しかし、この研究に携わった研究者らは論文のなかで、発生から2週間以降のヒト胚の研究は、次のような理由から重要であると述べている。
「ヒト胚の発達については、いまだ多くの未解決の謎がある」「この技術は、人間の生命の起源とヒト胚の発達についてのさらなる理解に役立つだけでなく、先天異常やその他の主要な生殖にまつわる問題を解決するための、理論的な基礎を成すことになるだろう」
人口子宮の技術自体は新しいものではなく、近年、急速に発展している分野のひとつでもある。だがそれらの実験で用いられているのは動物の胚芽であり、この技術を人間に用いるとなると、こうした法的な問題に加え、倫理的な懸念は避けられない。
「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」が取材した、北京にある首都児科研究所附属児童医院の研究者(センシティブな問題ゆえ匿名を希望)は、中国では代理出産が違法であり、こうした人工子宮のテクノロジーが病院を「代理の親」に変えてしまうと述べる。
「どの病院も、この責任を負いたいとは思わないでしょう」「誰もがそのように生まれれば、たしかに公平です。しかし、親から生まれる子供もいれば、政府によって生まれる子供もいるとしたら、大きな問題になるでしょう」
また、英紙「インディペンデント」は、このテクノロジーがアメリカのSF作家テッド・チャンによる短編小説、『デイシー式全自動ナニー』で描かれる機械の乳母を思い起こさせると指摘。この物語では、全自動ナニーのみによって育てられた子供は、他の人間とコミュニケーションする能力が育たないまま成長する。