まず介護施設の現場を訪問しながら、人事採用の責任者である総務部長のお話をうかがいました。
彼が言うには、「仕事がきつい、汚い、給与が安いという状況が定着率を下げている」のだと。
確かに、現場の特養老人ホームに一歩踏み入れた時に感じた異様な臭いに就労環境の悪さが印象づけられ、
改善の余地ありとは思わされました。
しかし職員ヒアリングからは、勤務時間、職務内容および給与体系は同業他社と大きな違いはなく、
臭い以外にB社の離職率がとりわけ高い理由が何であるのか、ハッキリとは分かりませんでした。
次に本社を訪ねて、B社社長と面談をさせてもらうことになりました。
今後3年以内に上場して現在の関東圏での施設展開を一気に全国へ広げたいと社長の鼻息は荒く、
そのためにも離職率の高さは企業の評価を下げかねず早期に改善したいのだとの強い意気込みが伝わってきました。
高い離職率の根本原因は判然としないものの、私はとりあえず職員の職場環境改善策として、
現場訪問で気になった臭いの対策をしてあげて欲しいと社長に進言しました。
すると社長は驚くべき言葉を返してきたのです。
「そんな話に私は興味ない。私がして欲しいのは、カネのかかる話ではなく、カネが儲かる話。
離職率を下げたいのも、無駄な募集コストをかけたくないから、企業評価を下げて上場時の株価を
下げたくないから、だと分かりませんか。企業は儲けてナンボです。
コンサルタントさんもしっかりその点を理解しないと仕事になりませんよ」
驚きました。初対面の私にここまで言うかと思うモノ言い。ハッキリ分かったことは、B社社長のビジョンは
「カネ儲け」一色だったということ。カネがかかることなら職場環境の改善すらしたくない、
こんな社長の下では、一般企業の社員以上に熱い使命感に燃え働いている介護士の人たちですら、
確実にやる気を失わせられていたのです。離職率で二極化している介護ビジネス界における、
高離職率企業経営者の一端を垣間見た気がしました。
http://www.j-cast.com/kaisha/2014/01/29195271.html?p=all